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蒼天航路 王欣太, 李學仁

by 豆野 仁昭
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太古より天は凄いものだと言われてきている。しかしわれわれ凡人にはあまりピンとこない。よくわからないのだ。が指が凄いことはよくわかる。めしを口に持ってゆくのは指だ。美しいものに触りたい欲求を叶えてくれるのも指だ。美しい女の涙をぬぐってやれるのも指だ。指は穀物や果実や大魚を掴むことができる。珍品・宝石・財宝の類もその指に握りしめ飾り立てることができる。それだけではない。その指、その手に剣を握ればあるいは、天下をわがものにできるかもしれない。

悪徳の烙印を押された人を注意深く見よ。同時に、美徳の誉れ高き人の正体を見極めよ。読者諸氏、おのれの感性を信じよ。信じるにたるおのれの感性を磨け。その感性の中にこそ、あなたの理性と正義感が脈打っている筈だ。

よこしまな時代を救うのは、常にまっすぐな人だ。おおむね、そうした人物は時代の悪癖の前に倒れる。しかし尚それでも、倒れても前進する人々がいる。本来、それは若者たちが担い、主導権を握るべきものだ。若者よ、立て、得失を超えて立ち上がれ。今こそ、君の時代だぞ。

人の痛みが、およそ社会の要求の底辺を形作る。もしその痛みに無頓着であったならば、仕返しを受けることになる。怒りが幾星霜にも積もり重なれば怒涛の如しである。真の英雄とは人の痛みを知る益荒男であり、物事がいつか正しきに帰る事を知る者だ。だからいつも彼らが時代を切り拓くのだ。

歳月を重ねれば、人は世の中の醜さとか汚さにまみえる。青春の日の希望に満ちたあの輝きが嘘のようである。年をとってからの友情は奇跡みたいなものだと人は言う。だが明るい日の頭上の青空は、私にもう一度信じることの素晴らしさを密かに確認させる。諸君、生きていること自体が希望なのだ。

ひどい時代には、いつも強欲で傲慢な官僚がのさばる。事態の本質を掴めず自分の欲得しか考えぬ無能な政治家どもと悪徳商人たちが、それに輪をかけて時代を悪くしてゆく。

人間を大きくするのは好奇心と賢さと一介の覇気である。そしてまず人間の魂をとらえるのは、光ではなく深い闇であった。

我黙すことならず。人を脅し殺すを商いにする者、殺むるに憚らず。天も我も許さじ。

天を知らずして法に従うとは笑止ではないか!法は天意に則った時にのみ正しい。

国家の大義とは万民の大義、天下の大義なり。

乱世の死は、父親や母親とは何の関係もなく、ただ自分ひとりで覚悟せねばならん。苛酷に生きることは、苛酷に死ぬより何倍も力がいるぞ。

これより先は天下と交わろうとなさらないお方に乱世の生き場所はありません。

おまえはただみんなから好かれたいと思ってるだけの洟たらしのうつけ者だ。おまえはな、民の笑顔ではなく自分に笑顔を向けてくれる民を欲しがっているだけだ。

俺ァ一介の侠者だ。てめえの居場所を見失うこたァねえ。

死地に臨んで立ち返るべきはただ一介の侠者の武と心。見定めるべきはただおのれの生き死にの置き場。

天下の常識をこじあけるにゃ常人たちを化かしてたらし込まなきゃなんねえ。それにゃおめえの考えにもわかりやすい衣裳が必要だ。

人は生きてゆくため、次に進むため、およそ答えの出ぬ問いに、強引に答えを出してゆくもの。しかしこの人は…この人の中には、膨大な問いがただ問いのままにある。

あなたは偉人たちが解いてきた人間の美しきものを信じない。人間には深遠にして生臭い業の宿ることを、彼らは解き明かしてはいないからだ。幼い頃、あなたも身をもって知ったように、人間は人を殺すことを楽しむ。そしてその楽しみ方は果てがない。眼をえぐり、舌をぬいて、鼻をそぎ、皮をはいで腸をひきずりだしてはきりきざむ。その苦痛の様を味わうために、人の肉体を傷つける技を至芸の域にまで究めるのが人間。あなたは人間の闇を知り、この世界の闇を知り、そしてその上、自らの闇を力に変える術を知っている。

天より人。そう考えるのが俺であり、俺は俺でしかない。

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